山本直人

電通をはじめとする大手広告代理店の収益は、マス・メディアとの長い歴史の中で育まれた関係を維持することでもたらされてきた。広告ビジネスには、外部からの印象以上にきわめて「農耕的」な風土がある。 それに対して、リクルートは次々とメディア自体を開発して、クライアントを開拓してきた。対比的にいえば、明らかに「狩猟的」である。何もないところからビジネスを興してきたのだ。 新たな情報誌を創刊するには、ゼロからお得意先を開拓する必要がある。それに比べると電通などの大手広告代理店は、その売上げのほとんどが、既存得意先からのものだ。 もちろん新規得意先も存在するが、リクルートのように自らメディアを開発して、そのためにあちらこちらに行くわけではない。いわゆる総合広告代理店の営業は、代々にわたって引き継がれた取引関係を維持することが最大の責務であった。 リクルートが毛細管の拡張と維持を最大の経営資産としていったのに対して、電通は元栓を押えることで収益の基盤を確立した。